病害の発生形態は大きく分けて三つに分けられるとおもいます。
- 地中の深層部
- 地際部
- 葉面部
1番の病害については、フェアリーリングやフザリウム病があります。これらの有効的な防除法としては地中に殺菌剤を浸透させる事が重要であり、表面だけでは効果が半減してしまいます。従って散布条件として浸透しやすくなっている土壌ということです。しとしと雨などは好条件だとおもいます。ントのワングリーンが当たり前になってきた昨今、排水対策は万全になってきており、大雨の時に薬剤散布を実施しますと流亡する恐れが十分に考えられますので、散布は見合わせた方が賢明かと思います。
2番の地際部の病害には葉腐れ病 (ブラウンパッチ他)があります。これは葉先だけに散布液がつくくらいの量では多少ききめが悪くなり、また雨などで倍率が上がってしまっても効果が落ちてしまうとおもいます。これらの病害は湿気の高い場所を好む為どちらかというと晴れた日の方がいいとおもいます。しかし、高温時の乾燥しすぎたグリーン等に撒く場合は薬害が起こり得るものと考えて、少量の散水は必要かと思います。
最後に葉面の病害等に関しては出来れば天候の安定している時に散布した方が賢明だと思います 地中の病害防除に苦労し、どうしたら深層部まで薬剤を効果的に入れられるかと、
悩んだりしましたが、アゾキシストロビンという薬剤の開発により少量散布でも効果出るようになったわけです。これからは薬剤の特性、及び病気の性質等を考えながら実施していけば、より有効な防除が出来るとおもいます。
殺菌剤散布と降雨について,一般論をいえば雨の日には殺菌剤を散布しない方が良いということになります。しかし,北陸の方がおっしゃるようにフェアリーリングであれば雨の日の方がいいというのも決して間違いではないと思います。この問題を考えるにあたっては,いくつかのポイントがあると思います。
1つめはターゲットとなる病原菌がどこに生息しているか,つまり病原菌に殺菌剤を到達させるためにはどのくらいの水量が必要かということです。
フェアリーリングをおこすキノコの菌は主としてサッチ表層から地中約10pあたりに生息しています。キノコ菌を抑えるためには地中10pくらいの深さまで薬剤を浸透させる必要があります。なお,キノコの菌は芝草組織内に侵入する能力は持っていませんので,芝草体内に殺菌剤が吸収されていてもキノコ菌に対してはまったく効果を示しません。殺菌剤が直接キノコ菌に到達することによってのみキノコ菌の生育を抑制することができます。したがって,散布水量を多くしたり(2〜10リッター),土壌浸透剤を添加する必要があったわけです。ですから,フェアリーリングに対してはシトシト雨(数ミリ程度)であれば,むしろ雨の日に散布する方がいいというのは一理あるといえます。ヘリテージは従来の薬剤に比べるとフェアリーリングに対しても非常に少水量で効果を示す薬剤ですが,水量を0.5リッターよりも1〜2リッターにする方が効果が安定します。
では,他の病害ではどうでしょうか。たとえばブラウンパッチですが,これの場合は雨の日にはやめておいた方がよいでしょう。フェアリーリングのキノコを除くほとんどの芝草病原菌は芝草表層〜サッチ層あたりを生息場所にしています。また,病勢が進展しているときには芝草表層に菌が存在していることが多いです。ブラウンパッチ菌はサッチ層やベントグラスの葉上で菌糸を伸ばしながらパッチを拡大していきます。また,炭疽病菌は枯死葉上にたくさんの胞子を形成し,雨滴や水滴によって胞子が拡散するようにしています。芝草への感染部位も地際葉鞘部〜葉となりますので,この部分に殺菌剤が残るようにした方が良いと考えられます。フェアリーリングの場合のように薬剤が下方へ移動する必要はほとんどないわけです。
なお,ピシウム性病害の場合は菌が土壌中を移動して根から感染することが多くなります。したがって,水量はやや多めにした方がいいかもしれません。ただし,薬剤の種類によっては高水量にすると効果が落ちることがあります(後述)。なお,赤焼病は芝葉上に菌糸を形成して拡大していきますので,さほど水量を必要としないかもしれません。
以上は,グリーンのような刈高の低いターフでの場合でしたが,フェアウェイやラフのように草丈が高い場合はどうでしょうか。刈高が高くなっても炭疽病や葉枯病のように芝葉上に胞子を形成して拡大していく病害の場合,水量はさほど必要ないでしょう。しかし,例えばラージパッチの場合は水量を多くする方が効果が安定するようです。ラージパッチ菌はサッチ中に菌糸を生育させ芝草の地下部(根〜地際葉鞘部)から侵入します。ラージパッチの場合,散布面積が広いため水量を多くすると散布に時間を要することになります。したがって,0.3リッター前後で散布されているコースが多いのではないでしょうか。残念ながら,このような水量では直接病原菌に到達する殺菌剤はわずかとなってしまいます。投下薬量を一定にし,水量を変えてラージパッチに対する効果を調査したことがありますが,最低でも0.5リッター,できれば1リッター散布した方が良いという結果を得ました。ラージパッチの場合は芝葉上に薬剤が残らずサッチ層に到達する方がよいので,シトシト雨くらいなら散布しても良いということになります。
もう一つの問題は殺菌剤が浸透移行性を有するか否かということです。
浸透移行能を有さない,つまり接触型の殺菌剤は直接病原菌に到達するか,芝草の表面に付着して侵入してこようとする菌に接触するかして初めて効果を示すこととなります。芝草表面に付着することも,菌の侵入を予防するうえでは重要です。しかし,直接菌の生息している部分に到達しないことには病原菌の菌密度を下げることができません。したがって,このような薬剤の場合は水量を多くする方が良いことになります。とはいってもグリーンの場合は0.5〜1リッターもあれば十分でしょうが・・・。
一方,浸透移行能を有する菌の場合も直接菌に働くこともできますので,菌の生息場所に到達しても良いわけです。また,芝草表面から体内に吸収・蓄積され,芝草体内の病原菌に直接作用することもできます。もちろん根から吸収することもできます。つまり,このタイプの場合はあまり水量を気にしなくて良いということになります。
ただし,例外的な剤があります。ホセチル(グリーンビセット,プルーデンス,ゴーレット等の成分)は浸透移行型の剤ですが,芝草体内への吸収は葉からのみです。根からは吸収されませんので,葉上にいかに多くの薬剤をのせるかということが重要になります。また,菌に対して直接的な作用はありません。サッチ層に到達した分(葉上に残らなかった分)はすべてムダになるということです。このような剤は雨の日に散布するとまったく効果を示さないことになります。
このように,病原菌と殺菌剤の性質を理解して考えれば,少々の雨の中なら散布しても良い場合があるということになります。ただし,殺菌剤の性質を正しく理解していないと無駄になりかねませんので,雨の散布はさけた方が無難でしょう。
